カラフルな川の石

山中温泉から少し山へ入ったところにおいしいお蕎麦屋さんがあります。不便な場所でお蕎麦を食べるだけに山道を走るような所なんですが、人気のお店で毎年車が止められないほど混んでいます。今年は道が一部通行止になっっているらしく、いつもより空いていてゆっくり行って来れました。

写真は途中で見かけた川。フォッサマグナミュージアムへ行った後のこともあって、糸魚川よりもカラフルなこの石には敏感に反応してしまいます。車を止めて最初は大人しく眺めていたけど結局ジャバジャバと入って石拾い。海の石よりまだ角ばった感じです。昔はこのもう少し上流でよく川遊びをしたものです。虫に刺されるのでパジャマを上に着せられて泳いでいるような都会のひ弱っ子でした。今ではすっかり川遊びもしなくなってしまったけど、こんなに綺麗な川だったんですね。あとで調べてみると九谷磁器の古い窯跡の近くでした。今まで山中塗の漆に気を取られていましたが、なるほど九谷焼きの産地もこのあたりだったんですね。

ここ数年、墓参のために北陸へ行くたび自分のルーツのようなものが気になるようになりました。
職人になろうなんて気持ちはこれっぽっちもないままに始めた傘の仕事。父の仕事を知っておきたいと思ったこともひとつにありますが、母方の祖父の影響も受けていたのかもしません。祖父もまた職人で塗師だったそうです。母は呉服屋に勤めていたので、着物と日傘の融合が今の仕事になっているのは面白いことだと感じます。最近は自分のルーツをつないでカタチにすると面白いことが生まれるような気がしていて、毎年仕事のアンテナ張っての北陸旅です。

能登半島ドライブ

旅の後半は能登半島へ行って来ました。宿も取らずにその日の風まかせ。だからこその素敵な光景にも出会えて感動がいっぱい。能登半島先端近く、木ノ浦海域公園。名所の灯台の少し手前ということもあり、人も少なくて泊まっている人ぐらいしかいなかったんじゃないかしら。小さな湾になっていてオープンカフェはジャズが流れるゆったりした空間。若い女の子たちがお店の外で風にあたりながらランチしてたのが気持ち良さそうでいい感じでした。水着に着替えてドボンとそのまま海に飛び込んじゃおうかなんて想像しながら海を眺めるのんびりしたひととき。


窓岩。このあたりは奇岩が続いて地形に詳しくなくても変化が面白い地形です。近くにある塩田も見て来ましたよ。海水を砂に巻いて塩を作る作業は「もう少し早く来れば良かったのに」と言うことで、まき終わった後で残念でした。今でも手作りの製法で作っている能登塩、しっかり買って来ました。

 

白米千枚田。下まで降りて登ってくる周遊コースは15分。遠くに見えているのは朝市の輪島です。

 

能登さくら駅。海を眺めようと車を止めに小道を入ったところにあった小さな可愛い駅。丁度青い電車も入ってきて、映画の様な素敵な光景でした。春には桜でいっぱいになるそうです。階段横には斉藤工さんの植えた記念樹がありました。絵になる駅ですもんね、撮影に使われるのも良くわかります。小さな可愛いロマンチックな駅でした。

能登半島は半島途中までしか電車が通っていないのでなかなか手軽に行かれないけれど、それだけに人も少なく海岸ドライブはとても良かったです。金沢を拠点に和倉や輪島で一泊するとゆっくり見て周れる大きさです。

ヒスイ海岸へ行って来ました

今年もお盆は北陸へ行って来ました。車だったので行きも帰りも無理のない距離をということで、糸魚川で一泊してののんびり旅です。

さて、なぜ寄り道に糸魚川を選んだのかと言いますと、ヒスイ海岸があるからなんです。近くにはフォッサマグナミュージアムもあり、ヒスイのことも勉強できるらしいのでずっと行きたいと思っていました。行きはお天鼓が悪く海も茶色い波が打ち寄せてましたが帰りはこの通り、石の海岸が綺麗です。

ヒスイに限らず綺麗な石が沢山あるので石拾いが楽しめます。波打ち際の濡れている石を探そうと思うと足がずぼずぼ埋もれて行くほど石だらけ。おまけに波が子供の拳ほどの大きな石を巻き込んで打ち寄せてくるので結構痛いんです。予備知識によれば、ヒスイ探しの狙い目は白くてスベスベ重い石。味の素状のキラキラがあったり、角ばっているものを探します。博物館で見たヒスイは所々緑色。お日様に当たるととても綺麗なんだそうです。でも緑色にはこだわらない方がいいそうなので、白い石を探します。

どぉですか?それらしく時々かざして見たりして、探して見ますがなかなかありません。重い石というのも大きい石はそれなりに重いのでなかなか難しいです。海岸は石だらけだし。ちなみにこの石は全然違います。こんな風に乾いた時に白く粉を吹いたようなものはただの石。

博物館に持って行くと学芸員さんが10個のみ、鑑定してくれます。この日はいらっしゃらなくてボランティアさんに見分け方を教えてもらいました。結果、ご覧の様に右側全部ただの石。行きに探したものも含めて3時間ぐらい探して本物はゼロ。大きな本物を触らせてもらって違いわかりました。予備知識がないと緑の石を探してしまいがちだそうです。10個の鑑定って結構ドキドキしますね。せっかく本物を拾っても捨ててしまうかもしれないし。

ヒスイはゼロでしたが一つだけ、宝石拾いました。瑪瑙(メノウ)です。水の中でキラキラしていてとっても綺麗だったので、ガラスかなとも思ったんですが拾っておいたもの。他の石にも名前をつけてもらったのでヒスイはなくても満足です。それに他の石にも興味が湧いて来て、博物館が身近でこんな風に町にあるっていいなと思いました。そういえば地元の博物館でも化石を見つけたら見てくれるって言っていたかも。

来年は石やヒスイをイメージしたデザインでオリジナルの日傘を作ろうかな。などとまた夢が広がっております。こうして石を眺めているとデザインのヒントやイメージが湧いてくるんです。水に濡らして窓辺に置いたら海岸にあった時のワクワク感も蘇ってくれると思います。因みに日傘屋だけど、石拾いには日傘よりも断然手ぬぐいに麦わら帽子派です。(笑)

涼しげなメダカの日傘

今日の日傘は涼しげな反物から。ご注文をお受けした時「日傘にするには透けてしまうし、ちょっと薄いんじゃないかしら。」とお話させていただいたんですが、この反物がとてもお気に入りとのことで、こうして日傘になりました。出来上がってみると、なるほどなるほど。このめだかのかわいさと言ったらたまりません。

小さなエサを指でちょんとつまんでと水に落としたら、あとはじっとキラキラ光る水面を眺めていたい。ゆっくりした時の流れにとっても癒されるメダカ柄。冷たい水も気持ちよさそうですね、まるで小さな池がそのまま日傘になってしまったような光景です。

そして心配していた生地の厚さは思っていたほど光を通しすぎることもありませんでした。まだまだ生地を判断するのに『美しい』と『難しい』が紙一重ですが、それだけに出来上がりには緊張感があって凛とした日傘に仕上がります。夏のコーディネートにひとつ加わると、これはきっとお会いした人の印象にも残りますね。着物のお供にとても素敵な日傘となりました。

染色家 内藤早苗さんの日傘

今日は久しぶりの青空。途端に日傘が恋しくなります。今日の日傘は染色家、内藤早苗さんの日傘です。今回もカッコいいですね。洋にも和にも似合いそうですね。今回もギリギリのご紹介になってしまいましたが火曜日まで、銀座の三越でお披露目されています。

3人展「涼を呼ぶ夏の暮らし」
注染 内藤早苗
籠 福田奈々子
ガラス 山下達己
8月2日(水)-8月8日㈫ 10:30-20:00
会場 銀座三越7階ジャパンエディション

アフリカンプリントの元気な日傘

関東は今日ついに梅雨明けしましたね。梅雨らしい梅雨もなく夕立のような雨と、昨日の嵐で開けてしまいましたね。ここからは毎日かんかん照りの日々が始まるんでしょうかね。

今日の日傘はアフリカンプリントの元気な日傘です。以前blogでご紹介したアフリカンプリントの日傘のように、「生地のミミにプリントしてある文字を1箇所、縁にアクセントとして使ってください。」とのご希望。お使いになる方は目の付け所が違いますね。ミミのプリントがこんなに人気があるなんて。作り手側からは出てこないアイデアですよ、ほんとに。

さて、この大きな柄。縁に1箇所文字を入れるために裁断すると、柄がぐるりと繋がらなくなってしまうんですね。底辺の高さが変わります。丸の中心の茶色の高さは揃えたいですものね。そこで、考えた結果、留め紐に使うことにしました。目立たないけど、傘を閉じて巻いた時にはしっかり主張します。写真があまり上手じゃないので分かりにくいですが、ボタンはパッチワークのようになった貝細工ボタン。キラキラして可愛いです。太陽が眩しい季節に明るい色の元気な日傘があったら、暑い日もお出かけが楽しくなりそうですね。

 

バティックの日傘

今日ご紹介の日傘はインドネシアのバティックから。いつもとちょっと雰囲気が違うのは折りたたみの日傘だからです。頭の部分が石突きになっていてサイズもほんの少しだけ長日傘より大きめです。

この日傘、私物なんですが普段使いには長い日傘が差し易いので、あまり出番がないんですが、夕方までのお出かけにはやっぱり折りたたみも便利です。三連休最終日の昨日は江戸東京博物館から浅草までぶらぶらと散歩に出かけて来ました。

柄物なので私にしては派手かなぁと思っていましたが、客観的にこうして見ると思ったほど派手には見えないものですね。バティックは「ろうけつ染めの布」のことを言うそうですが、この染め方も裏まで色が染まっているので日傘にしても綺麗です。差していても柄に程よい抜け感があるので木漏れ日のように涼しく感じられて気持ちがいいんですよ。バティックは日本でもジャワ更紗という名で昔から使われていたらしくて、博物館にも可愛らしい更紗のタバコ入れが展示されていました。江戸の人たちも好んで使っていたんですね。

カンガで日傘

今日は明るくて、夏にぴったりの日傘のご紹介です。カンガという生地だそうですよ。明るくて楽しくて素敵な日傘になりそうです。blogを読みながら一緒に作っているつもりで楽しんでいただきたいので、出来上がりの写真は最後のお楽しみにしましょう。

約2メートルの大きな生地からスタートです。お手紙には出来ればボーダー部分をぐるりと一周使ってくださいとのこと。パラソラの作り方ページをご覧になっている方はもうお分かりかと思いますが、三角の生地を互い違いにせずに、三角を横に並べて裁断していくので贅沢に生地を使います。

ところが、何かおかしい。そうなんです、この写真のよれっとした感じ。雑に置いたわけじゃないんですよ。生地が歪みます。比較的日本製の生地はピシッと縦横生地の目が揃っていますが、外国の生地はそこがゆる〜い感じです。でもこれはこれでいいんです。身体に巻いて使うものだから。ただ日傘にしようと思うと、地直しはしないといけません。出来上がりに歪みが出ちゃうので。それにしてもすご〜〜〜く曲がってます。あっちを直すとこっちがヨレ〜。こっちを直すとあっちがヨレ〜。写真ではわかりにくいんですが、円の柄が楕円になるぐらい、写真でも右端のライン曲がってますでしょ。柄に騙されないように生地の糸目との戦いです。1時間近く格闘しました。私の日傘製作史上稀に見る難しさ。地直しのコツってあるんですかね。

さて気を取り直して裁断です。横に並べて裁断というのはこういう裁断の仕方です。実はもっとオレンジの柄を入れたかったんです。地直しも頑張ったことだし。ボーダーが幅広すぎる気もするし。水色の半分ぐらいまで底辺をカットしても連続柄が面白いので三角を全体的に上にあげようかなとも。しかし、左右の縦の柄が入らないようにすると入れられる位置がギリギリ。大きな生地なのにまさかのギリギリ。最初の予想に反してボーダーの幅が半分近くまで広くなりました。

そして出来上がったのがこちらの日傘。じゃーん。

可愛イィ!素敵っ💕自画自賛!予想に反して、ボーダーが活きています。カットしなくてよかった。とっても可愛いです。いつも思うけど私の目は節穴ですかね。お客様のお見立てにいつもあっぱれです。

こんな感じで出来て見ないとわからない日傘作り、楽しんでいただけましたか?そしてパラソラは今日も悩みながら楽しんで作っています。

正絹の着物から日傘

毎日来る日も来る日も日傘を作っているので、そろそろ夏も終わりかしら?という気にもなりますが、まだまだ本格的な夏はこれからですね。今はパラソラのオリジナル日傘はお預けで、オーダーメイド優先でお作りしています。お待たせ中の皆様、もう少しだけお待ちくださいね。
もしも、パラソラの日傘をいつできるの?ってお待ちの方いらっしゃいましたらお声掛けくださいね。ご依頼があれば急いで作ります。ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘

パラソラでは「浴衣からもお作りします。」とご紹介しているためでしょうか、「絹でもできますか?」とよくお問い合わせをいただくのですが、もちろん絹でも作れます。よほど薄い、厚い、硬いでなければ作れるんですが、服と違って骨に巻く扱いやすさを考慮すると向き不向きはあります。今日ご紹介するのは正絹の日傘です。珍しく続けてご注文いただいたので2点一緒にご紹介します。

1本目の日傘は紳士用の反物からご注文いただきました。く〜ッカッコいい。私はこういうタイプかなり好みです。オーダーメイドでは個性的なご注文が多いのですが、意外にもこういうシンプルな日傘、使い勝手が良いと思うのです。服を選ばないというか。あくまでも私の場合ですけどね。遠目には一色に見えるので、スーツのようなきちんとした服でも、お着物でも、涼しげなワンピースでも良いんじゃないかとおもいます。反物の幅が広めなので約3.2mでできました。

2本目のこちらの日傘も使いやすそうなモノトーン。よく見ると互い違いに白黒白黒と柄が並んでいます。なので柄合わせしています。この規則性に気がつけばなるべく合わせるのですが、染める時の版のサイズが違ったり、折のピッチが違ったりで、繰り返しがお着物によってまちまちなんですね。もしかすると着丈に関係してくるので決まりはあるのかもしれませんが、規則性見つからない時はそれなりに。この日傘の場合のように柄が大きいのと、柄合わせで生地が足りなくなることもあるので、合わせられないこともありますが、今回は上手くいきました。

どちらの日傘もつるっ、さらっ、シャキッとしていて触り心地とってもいいです。畳んだ姿も綺麗で、防水加工が可能なら雨傘にもいいかもしれません。因みに防水加工は数がまとまらないとできないので、パラソラではお作りすることができないのが残念ですが、このタイプの絹はとても美しく仕上がります。

朝顔の日傘

前回のblogでもご紹介しましたが、型を作って日傘を作るのはなかなか根気のいる仕事です。行程の中でも特に経験が必要な部分かもしれませんね。パラソラの通常の日傘づくりでは裁断から始まって、微調整でサイズを合わせるということをしています。最初の頃はこれが何度も直すことが多かったので1日に一本しか張れなかったなんてことも多々ありました。今は最初の縫製である程度調整しながら縫ってしまうので格段に作る時間は短縮しています。仕上がりも大抵のものは察しがつくようになりました。

そんな技術的なこととは別に、出来上がってみたら想像を超えている。という嬉しい驚きがあることもあるんです。それが今日ご紹介の日傘。

朝顔柄の日傘です。生地を受け取った時はすっと朝顔が一本伸びているシンプルなデザインだったので、出来上がりもきっとスッとした日傘になるのかなと思っていたんです。裁断では数少ない朝顔の花を活かせない部分があって残念で、出来上がり寂しくなっちゃうんじゃないかしら。と思いながらも、これしか裁断のしようはないし、お花があまり入れられなくてお客様、がっかりされるかなと少し心配だったんです。

ところが骨に張って広げて見たら「何ということでしょう〜。💕💕💕」もうびっくりですよ。すごく可愛い。そして、写真ではお伝えできないのが残念ですが、さしてみると想像をはるかに超える可愛らしさに包まれました。「え〜ほんとぉ?」って思わず言ってしまったぐらいびっくりです。何でしょう、日本人の血がそう思わせるのか、乙女心に火がついたのか、何せ可愛いんです。

もしこれを想像して生地を送ってくださっていたとしたら、そうとう「お目が高い!✨」。あっ、このフレーズ、ワサビ・エリシさんでの展示中、誰かが素敵ポイントを指摘するたびに使って盛り上がっていた褒め言葉なんです。みんなが何となくみているところに素敵ポイントをポンと発見してしまうと、「ほんと、それ素敵だわ。」となって「お目が高い。✨」ぴったりな言葉ですよね。ちょっぴりお笑いのネタのように口を揃えて連発していましたけどね。女子ってそんなもんですよね。(笑)

こんな風に生地で見るのと立体にするの、そして中に入って包み込まれる感じ。その時々で生地のイメージが変わるところは面白いですよね。そんな体験をしてしまうと、また作ってみたくなってしまうのも日傘作りの魅力です。こちらのお客様もリピーターさんです。そういえば前回も「その手がありましたか」っていう素敵な日傘をオーダーしてくださっていました。

日傘の張り替え

今日は日傘の張り替えのお話です。パラソラで扱っていない初めての骨に張るのがどんな風に難しいか言い訳がてら?作る行程を楽しんでもらえたらと思います。今回はとても大切に使われていたレース付きの日傘を張り替えます。

まずは生地を裁断。と、その前に今回は型がないので骨の数に合わせて型を作ります。型といっても用服と違って三角一枚だけ。しかしこれが結構大変です。洋服で言えば身体にぴったりフィットさせる。そんなイメージなのでユルッとしていてはまずいんです。

厚紙のおおよその型ができたところで一本試し張り。生地が小さくて入らないといけないので試し生地を張ってみます。

微調整が必要ですがサイズはOKのようです。10本骨は初めて作るので、次は木型を作ります。木型ができれば後は直裁断ができるので10枚の三角をサクサク裁断してレースをつけて繋いで骨に再び張ります。

今回ご依頼の生地は麻素材に裾レース。どちらも一回で張るのは難しい素材で、おまけに傘用ミシンに通らないので縫い方に工夫が必要です。今回は兎に角張ってくれればと、ある程度お任せいただいているので、ここは思い切って型通り張ってみましょう。レースは一度湯通しします。

本張り。

ジャーン!そしてガーン!( ̄◇ ̄;)予想はしていましたが予想以上のたわみ。先に張った試し張りの黒い傘と同じ型を使ってもこんなに張り具合が違うんです。レース部分はピンと張れているのに麻はタプタプ。これはかなり修正が必要そうです。とりあえず一部解いて縫い直します。

修正1回目。

だいぶたわみが取れています。でももう少し取りたいところ。ただ麻はやり直すたびに伸びてしまうので解くことが困難です。いつものオーダーではこの辺りで終了しますが今回はレースとのつなぎ目にも問題あるので直した方がいいという判断。

修正2回目、一部解いて縫い直しました。しかし修正ではどうにも決まらないので結局再度全部解いて裁断からやり直しました。

修正3回目。

ジャジャジャーン。どうですか?張りはよくなりましたよね。

ただ残念なことに裏があまり綺麗じゃないんです。傘の仕上げは服と違い繋ぎは切りっぱなしなので何度も縫い直したためほつれが目立って来ました。もうこれ以上の調整は悪化しかねないので限界です。結局このまま最後まで仕上げることにしました。骨と生地を留め付けて、ボタンを付けて完成です。

でもやっぱり…
これでは納得行かないんですよね。お客様、とっても大事にされていた日傘なんです。きっと新しい傘も大事に使ってくれると思うんですね。そう思うとこのままお渡しするわけには行かなくて、解きたい気持ちと、やり直して悪くしたくない気持ちが戦って全然眠れない。シーズンオフならいざ知らず、あまり時間をかけると他のお客様の仕事も遅れてしまうし。いやー悩みますよほんと。「でも直しますよねぇ。納得いっていないんだから。」

と言う訳で生地変えます。✨翌日朝一で決めました。そうするとまた調整から始まってしまう可能性もあります。しかもレースの湯通しからやり直しです。でもあと1日だけ。生地を変えれば大丈夫と言うカンを信じて、解くコツもつかんできたので、一から作り直します。

修正4回目。露崎付けも試し張りから数えて50個目。

ジャーン!今度はいいんじゃないですか?ちょっと張りがきつめです。でもレースが伸びて露崎が外れてしまわないように。良いと思います。シルエットも綺麗です。素材は綿、さすがにパリッと張れました。

生地を見極めるのも、新しい型で作るのもまだまだ修行ですね。麻もレースも市販品の日傘には良くありますがオーダーでは言葉通りの一本勝負。麻と一口に言っても日傘に向いているものを見極める必要があることが実感できたお仕事でした。発送を終えるとホッとして脱力状態。_| ̄|○   はぁ〜でき上がって良かった〜。

そんなひと仕事終えた感の夜、別のお客様からメールが届きました。お届けしていた日傘に大喜びしてくださっていて、お嬢様の喜ぶ笑顔のお写真まで。先までの緊張していた仕事から一変、ご褒美いただいた気分でした。こんなこともあるから報われるんですよね。ありがとうございます。

ヨシッ、切り替えて遅れた分取り返しますよ〜。ピッチあげるのでお待たせ中の皆さま、もう少しお待ちくださいね!来週一週間はサクサク進む予定です!

版画家 藤村洋介さんの日傘


今日ご紹介するのは版画家 藤村洋介さんの日傘です。夏の間、中村風鈴店として懐かしい手売りの風鈴で涼を運んでいる藤村さん。6/20から東京での個展のためにと日傘をご注文いただきました。

この可愛らしい柄は元々は風鈴の短冊用に作った版画がもとになっているそうです。床屋ストライプですって。ネーミングも遊びゴコロがありますね。今回は柄向きを考慮して生地を横使いしています。横地使いは時々伸びてくることがあるんですが、こちらの生地は以前にも作ったことがあるそうなので、その点安心して張っていますが、念のためいつもより心持ちきつめに張りました。

中村風鈴店さん夏はこんなスタイルで風鈴を売り歩いてるんだそうですよ。

懐かしいですね〜。昔はこうした風鈴屋さんや金魚屋さん、竿竹屋さんにほおずき屋さんまでいろんなお店が売りに来ていました。パラソラのロゴも実はこうして街で見かけるアイス屋さんをイメージして作ってるんですよ。アイスクリンの冷たくて涼しいイメージです。最近は猛暑続きですけど、こうした団扇や風鈴で涼を感じる夏もいいものです。夕立の後涼しくなったり、銭湯へ行って浴衣を着せてもらってお祭り行ったり。楽しい思い出が蘇ります。

個展のお知らせをいただきましたので貼っておきますね。クリックで大きくなります。一番下には中村風鈴店さんに出会える手売りの予定表もご紹介しておきます。

一柳綾乃さんの日傘

この美しい日傘は………そうです一柳綾乃さんのデザイン。
水彩画作品を日傘にアレンジしています。美術館にあるモネやゴッホの日傘のような感じです。素敵ですね〜。涼しげで、この透明感のある空気にうっとりです。

さて昨日に引き続きどんなふうに日傘として仕上げているか、今日もちょっとご紹介しますね。
まず生地を日傘のサイズに裁断します。この幅にする前もですが、この段階でもどこを使うか考えます。面白いところ、見ていて飽きないところ、つい目がいってしまうところ、最もドラマチックなところを絞って、目測でどの向きで裁断するかを決めます。私が使いたいのは右端のブルーとピンクの混ざり合っているところと中央のお花、左下の黄色から赤、ブルーへの変化。そしてお花は首では切らない。これらを考えて型を置いて直接裁断して行きます。生地が足りなくなると困るので無駄なく裁断するため、かなり制約はあるんですが、左右どちらから始めるか、上下どちら向きで始めるかで使える部分が大きく変わってきます。責任重大。まさに作家とコラボしているような感覚です。

じゃーん。裁断できました。右下のブルーの部分は使えませんでしたが他は入りました。右から二番目のお花がないところも意外に大事なんです。だからここを少し左気味に裁断しているのはこだわり。一柳さんの作品で大切な空気を感じるところだからです。他のコマと関係なく存在してしまわないようにと考えての選択です。こんなことの積み重ねで1本の日傘が出来上がります。

先日ご紹介した作品展は大好評だったそうです。素敵な日傘を沢山オーダーいただきました。そして福井を皮切りに京都、静岡と巡回展を行うことが決定したそうです。楽しみですね。どうぞお近くの方はお出かけしてみて下さいね。案内状を貼っておきます。

クリックで大きくなります。

EMI SUZUKI さんの日傘

今日ご紹介するのはテキスタイルデザイナーの EMI SUZUKI さんの日傘です。
楽しいですね〜。本来は風呂敷なんですよ。触り心地がさらっとしていて日傘にぴったりなのは驚きです。オーダーのお問い合わせの時点で「どんな仕上がりになるかデザインを知る方法はありますか?」とご質問頂いたんですが、「正直、作ってみないとわかりません。」とつれないお返事しかできなくてごめんなさいね。言い訳と言ってはなんですが、なぜってこんな風に作るからなんです。

この2本の日傘は色違いの同じデザインの生地から作っています。風呂敷を半裁して1枚目は同じ裁断。そして2枚目は天地を変えて作ってみました。そうなるとつなぐ時もバランスが変わるので並びを変えていきます。だから、出来上がりも微妙に違います。どうですか、違いがわかりますか?

そんなわけで出来上がりを想像するのはとても難しいんです。そして裁断が5ミリ左右にズレても繋いだ時の印象が変わります。特にこういうデザインだと、もうどこがどこへ行ってしまったのやらで、出来上がりから逆算して同じものをと言われても私の頭ではとても難しいのです。それでも出来上がりはどちらも素敵でしょ。あまりコントロールしすぎず楽しんでもらうのが一番かと思います。

このポップで楽しい日傘は6/9から6/13、下記のギャラリーでお買い求めいただけます。ご興味ある方は是非お出かけしてみてくださいね。EMI SUZUKI さんは普段はフィンランドで活動されているんだそうです。だからこその綺麗な色使い。きっとほかにも沢山の素敵なデザインに出会えることと思います。案内状を貼っておきますね。

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粋な日傘

ここ数年5月はもう夏ですね。季節が2、3ヶ月ずれてしまったのかと思うほどの良いお天気。日傘屋にとっては嬉しい暑さですが、急いで作らねばと毎日どことなく焦っています。

こうしたお天気が続いていると、今日ご紹介するシャキッとした日傘、いいですよね。白と紺が粋。そして見た目がスッキリしているから気持ちも余計なことに煩わされなくて気持ちいい感じがします。今回は反物でお預かりしたので贅沢に柄合わせも意識して作りました。広げて見ると綺麗なラインが現れて、和柄なのにどこか洋風感も感じられます。そしてたたんだ時がまた綺麗。ストライプだけが見えて広げた時と違った印象です。差して良し、たたんで良しの2倍楽しめる日傘になりました。お揃いで袋もお作りしました。1つはプレゼントなんですって。喜んでもらえるといいですね。お揃いだけど少し仕様が違う出来上がりになるように袋の留めボタンも色を変えています。早速のこの暑さ大活躍しているのではないでしょうか。

内藤早苗さんの日傘

今日の日傘はテキスタイルデザイナーとご紹介していいんでしょうか、内藤早苗さんの日傘です。
カッコいいですね〜。こういう日傘、なかなか手に入れるのは難しいですよ。可愛い日傘というのは案外ありますが、かっこいいそして洗練されたデザインはなかなか見かけません。どんな人がさすんでしょうか。ファッションやアートに敏感な大人の女性をイメージします。そして男性でもカッコいいんじゃないですか。中性的な魅力がありますよね。染めなので実物の力強さは見れば見るほど吸い込まれそうに深く、この赤と黒の色の混ざり具合にときめかずにはいられません。私ももう少し自分がカッコ良い人だったらこの日傘差したいです。あ、もう少しより大分カッコ良かったらですかね。手元は椿、高級感のある黒のタッセルをつけました。

もっと早くご紹介したかったんですが遅くなりました。ただいま展示会されています。27日まで。ご興味のある方は是非どうぞ。クリックで大きくなります。

 

今年の夏はこれからでした。

今日はワサビ・エリシでの展示最終日でした。パラソラの日傘は高価な細工もなく、UV加工もしていなくて、昔ながらの作り方でただただ真面目に作った日傘達ばかり。自分ではどこが特別かはわかりませんが、作りが良いと褒めてくださるアパレル業界の方や、「あなた、いいわよ〜。このまま頑張って!」なんて私を応援してくださる方がいて、お仕事してきた結果を評価してもらえて、とっても励みになりました。今年はちょっとお天気に恵まれませんでしたが、あっという間に今日で終了です。足をお運びくださったみなさまありがとうございました。私はこれですっかり今年の夏も終わったような気でいますが、これからなんですね。夏。まだまだこれから日傘の季節です。

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さて今後の予定は…

ここからは自分のやりたいこと、できることをもう少し整理しておきたいなと思っているところです。お待たせ中のオーダーをまずは仕上げて、サボテンの日傘も早く作ってショップに並べたいと思います。

母の日の日傘

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今日は母の日ですね。パラソラの日傘もプレゼント包装のご依頼承っています。お着物からお揃いで二本作って一本はプレゼントに。こんなご依頼も最近増えていて、お母様から娘さんへ。娘さんからお母様へ。男性からは出来上がりの日傘をプレゼンに選んでいただくこともあって嬉しくなります。作っている私は母ではないので、日頃、誰にもなんのお世話もしていないのに母の日にはいいなぁと羨ましく眺めております。
母の日といえば、先日コンビニでこんなことがありました。外国人のとても気さくな店員さんが宅急便の発送票を見て
店員「なんて書いてあるの?」傘の字略字で書いてしまったのでわからなかったのかもしれません。
店員「あぁ、ひがさ?いいね。プレゼント?」
私「私が作ったものなの」
店員さん「手作り?すごいね〜。プレゼント?おかぁさんよろこぶよ。」って。
違うけど…どんどん話が好意的に進むので、つい言いそびれました。(^-^;
でもとっても優しいおしゃべりでほっこり気持ちよく荷物発送してきました。コンビニで話したくない人もいるかもしれませんが、昔はお店でのこんなちょっとしたやりとりは普通のことだったのに、少し新鮮に感じてしまいました。でも言われてみると、たとえ自分で作ってなくても手作りのプレゼントは喜んでもらえるかもしれないですね。モノによっては気持ちが入りすぎて「着てはもらえぬセーターを♬」なんて歌にもなりましたけど、さすがにそこまで思いを込めては作りませんから大丈夫、日傘はもっとサラリと軽やかに差してもらえると思います。おリボンほどく時のワクワク感は幾つになっても変わらないものです。お誕生日のプレゼントや帰省のお土産にも、ぜひラッピングお声掛けください。

寄り添う日傘

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パラソラのオーダーメイドは、お好きな生地を選んでお好きな手元を付けて自分だけの日傘が作れるところが一つの面白さだと思っています。だから色々な組み合わせの日傘が出来上がって作り手としても楽しいところ。生地選びにもセンスが反映されますものね。服を選ぶように日傘も選べるなんて、デザインを考えていると力入っちゃうんじゃないでしょうか。

さて今日ご紹介の日傘は浴衣から。届いた包みを解いた時から綺麗に解いてたたまれて、大切にされているなという印象を受けました。添えられたお手紙からもお気持ちが伝わります。自分デザインの日傘の一方で、こうした思いに寄り添うデザインもとても素敵な選択だなと思います。

薄いブルーグレーの地色に深い紺色がとても綺麗です。ところどころグリーンや黄色の差し色がされているところもこの柄を柔らかく見せてくれていて、こういう色使いって見れば見るほど華やいでくるというか徐々に色が見えてくるところがいいですね。水の流れや藤の花もそよそよ音が聞こえて来そうです。どこか名画鑑賞にも似てますね。ってちょっと大袈裟ですけど。そんな風に私は柄をみてしまいます。

そしてこの日傘の素敵なところは何と言っても触り心地。解いた着物だからでしょうか。肌に優しくて、たたむ時手のひらがとても気持ちがいいんです。案外気がつかないことですが気持ちがいいと神経がそこに集中して、「あらっ。気持ちいい。」ってなるんです。もちろん手元でも気持ち良さも感じますよ。ひやっとしたり天然木の心地の良さだったり。暑い時期のお出かけは日傘やバッグ、触り心地に気をつけて選ぶと何気ないときに冷やっとサラッと伝わって、もっと快適になるかもしれません。どうぞ参考になさってくださいね。

型染めの日傘

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GWも、オーダーメイドの日傘、作っておりますよ。着々と進んでいます!
今日ご紹介するのは作家さんからのご依頼。お着物のための柄を日傘用に染められたそうです。流石に繊細なデザイン。

毎年少しづつ染め体験していたので最近は柄を見てどんな工程で染められているのかがなんとなくわかるようになってきました。なので、この型すごいです!っていうこともよくわかります。どれだけの手仕事の積み重ねでここにこうして日傘になっているのか。おまけに私の散歩コースの風景なんです。もちろんお会いしたことはないのでワタシのための風景ではないんですけどね、こういう世界観は誰にでも心の中に持っているんじゃないかしら。この藍と白の世界からどれだけ想像力を膨らませることができるかで、きっと味わいも変わってくるんでしょうね。

そしてもう一本お作りしました。こちらは折りたたみ。
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美しいですね〜。同じ生地から作られていますが、印象が変わりますね。日傘としては少々厚めの生地だったので色々ご相談しながら進めましたが、ほぼ最初のご依頼通りに仕上がりました。通常折りたたみは骨を折って畳むので生地も小さくたたまれて重なるため思った以上に薄い生地で作られているんです。ななかなかそこを作る前に読むのが難しいのですが、結果オーライ。素敵な折りたたみの日傘になりました。

引き続きワサビエリシのパラソラ展は15日まで
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